解析B1

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更新日 2011-04-13 | 作成日 2008-02-18

解析B1

2009年度前期開講の解析B1の授業と演習についてのページです.

講義と演習について

基本情報:

担当教官:辻井 正人 
演習担当:佐野 友二,辻井 正人
TA: 栗林,小笠原

講義時間:月曜日 講義(10:30ー12:00)
         演習(13:00ー15:30) 
*進度により30分ー1時間程度の延長はあり.
*オフィスアワーは特に設けません.質問等は演習の時間に受け付けます.

連絡:期末テストを7月13日におこないました.(7月27日には答案の返却を行います.)なお,7月13日に受験できなかった人と期末試験の成績が十分でなかった人を対象に7月27日の午後に追加試験を行います

New :期末試験の解答(暫定版)

更新履歴

2009. 3. 31
このページを作成しました.

講義の概略

この講義は解析A1の講義の続きで.複素関数論についてより詳しく学びます.解析A1の講義では複素関数論の基礎について学びました.基本的な定義を導入し,コーシーの積分定理などの正則関数の基本性質について述べました.この講義の前半ではその続きとして,級数展開(テイラー展開とローラン展開),孤立特異点の分類や留数定理の応用,等角写像について学びます.そこまでで複素関数論の標準的な教程が終わります.(これは世界中どこでもほぼ同じ.)具体的には教科書の5章と6章はほぼそれに沿う形で,7章と8章は一部省略して講義する予定です.後半はもう少し進んだいくつかのトピック,例えば

  • リーマン球面と1次分数変換
  • 単位円板上の非ユークリッド幾何学
  • ラプラス方程式と調和関数

などについて講義をする予定です.(前半の進度によって調整します.)

演習について

演習は講義クラスを2つに分けて,行います.演習は「問題を解く」,「黒板で発表する」,「質疑応答」によって,講義内容の理解を深めることを目標にします.前期の演習は,学生が黒板で解いた答案を講師が講評するという形でしたが,さらにそれを進めて,学生と講師,学生と学生の間で議論ができると良いと思います.(これは3年生後期から始まるセミナーへの準備にもなります.)

期末テストを7月13日に予定しています.(7月27日には答案の返却を行います.)なお,7月13日に都合が悪い人は7月27日の午後に別に試験を行います


講義に関する情報(プリント等)

  1. 講義についての説明LinkIcon
  2. 講義プリント(1次分数変換について)
  3. 演習問題プリントLinkIcon(授業で配るよりも先の部分も含まれていますが,それは作成中の部分で今後変更や修正がある可能性があります.)
  4. 小テストLinkIcon
  5. 講義ノートLinkIcon

講義の進度と予定

第1回(4月15日) 複素数関数の収束

  1. 解析A1の講義の復習.
  2. 数列・級数の極限

第2回(4月22日) 複素関数列

  1. 関数列の収束(各点収束,一様収束,広義一様収束)
  2. 関数項級数とワイエルストラスのM判定法
  3. 正則関数列の極限

第3回(4月27日) べき級数

  1. 収束半径
  2. 項別微分・項別積分
  3. べき級数の積と合成

第4回 (5月11日)  テイラー展開とローラン展開

  1. テイラー展開とローラン展開
  2. 一意性
  3. 具体的な関数の展開
  4. 部分分数展開

第5回 (5月18日)  零点と極

  1. 零点の孤立性と位数
  2. 孤立特異点の分類(除去可能,極と真性特異点)

第6回 (5月25日)  零点と極(続き)
前回の続きで,極とその位数,極と真性特異点の特徴付け(ワイエルストラスの定理,ピカールの大定理)について述べる.

第7回 (6月1日)  留数定理
孤立特異点の留数およびその積分形への簡単な応用について講義する.

  1. 留数の定義
  2. 留数定理
  3. 留数の計算方法
  4. 簡単な応用

第8回 (6月8日) 留数定理の応用.
留数定理を応用して,実積分を計算する.教科書に沿って次の場合を扱う.

  1. 有理関数の無限積分
  2. 三角関数を含む無限積分
  3. 特異点が実軸上にある場合
  4. 多価関数の無限積分
  5. 三角関数を含む定積分

第9回 (6月15日) 偏角の原理のルーシェの定理
偏角の原理とその応用について述べる.

  1. 偏角の原理
  2. 偏角の原理の意味(回転数)
  3. ルーシェの定理
  4. 代数学の基本定理の別証明.

第10回 (6月22日) 1次分数変換(1)
リーマン球面上の1次分数変換について講義する.

  1. リーマン球面
  2. 1次分数変換の定義
  3. 非調和比と3点対応
  4. 円円対応

第11回  (6月29日)  1次分数変換(2)
1次変換について,次の項目を講義する.

  1. 対称点の保存
  2. 具体的ないくつかの1次分数変換(Cayley変換など)
  3. 単位円板や上半平面を保つ1次分数変換
  4. 1次分数変換の普遍性

第12回  (7月6日) 単位円板上の非ユークリッド幾何学
単位円板上の非ユークリッド幾何について述べる.具体的には次の項目について述べる.

  1. ポアンカレ計量
  2. ポアンカレ計量についての測地線
  3. 平行線の公準の独立性

第13回 (7月13日)期末テスト

第14回 (7月27日)期末テストの返却(午前)





教科書と参考書 

教科書として
「複素関数入門(原書第4版)」ブラウン,チャーチル著,中野訳 (数学書房)
を使います.複素関数論についての入門的な書物で内容は標準的です.演習問題が多く載っていて解答も巻末についているので自習がしやすいと思います.
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参考書として
「複素解析」アールフォルス著,笠原訳(現代数学社)
を挙げておきます.これは基本的に学部後期から大学院向けの教科書で,内容的にも上に書いた教科書よりも高度です.しかし,基礎的な部分から書いてあるので,2年生でもやる気があれば十分読み進められると思います.

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複素解析について学ぶ上で,実変数関数の解析についてよく知っておく事は大切です.実数の連続性に関する議論や収束についてのイプシロン=デルタ論法,またコンパクト性(全有界性),一様連続,(広義)一様収束,上極限・下極限などの概念は,複素関数についての議論を展開する上で必要になりますが,一方で苦手の人も多いところです.その辺を特に丁寧に解説したのが次の本です.
「解析入門」田島一郎著(岩波全書)
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