本年度のセミナー記録
令和7年4月18日(金) 15:30 -- 17:00
- 会場
- 九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 5階 C504小講義室
- 講演者
- 青木 基記 氏(京都大学)
- 題目
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領域上におけるライプニッツ則に基づいた分数階微分の積の評価について
- 要旨
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本講演では, ライプニッツ則を背景とした分数階微分の積の評価を有界領域上で考える.
分数階微分に関する積の評価の研究は, 全空間上において非線形偏微分方程式の初期値問題の適切性への応用の観点と調和解析学的観点の両側面から研究されてきた.
実際, Kenig--Ponce--Vega (1993) は微分指数が1未満の場合におけるライプニッツ則に対応する評価をソボレフ空間上で導き,
一般化KdV方程式の初期値問題の適切性の研究に応用している.
一方で, 評価の導出手法と境界条件の整合性に関する困難性から,
領域上における分数階微分の積の評価は明らかになっていなかった.
本講演では, Iwabuchi--Matsuyama--Taniguchi (2019) が導入した領域上のベソフ空間を用いて
Kenig--Ponce--Vega (1993) に対応する評価式を示す.
本研究は岩渕司氏(東北大学)との共同研究に基づく.
令和7年5月23日(金) 15:30 -- 17:00
- 会場
- 九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 5階 C504小講義室
- 講演者
- 川本 昌紀 氏(岡山大学)
- 題目
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Modified scattering for the nonlinear Schrödinger equation with long-range potentials in 1D
- 要旨
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長距離型の線形ポテンシャルとゲージ不変な長距離臨界冪のべき乗型非線形項がついた非線形シュレディンガー方程式の散乱問題を考察する。
空間次元が2,3次元の場合には, 線形ポテンシャルと非線形項の両方に依存した位相修正を施す事で修正波動作用素の存在が示されたが, 1次元では未解決であった。
そこで, 本講演では, 空間1次元の場合でも, 小さな散乱データに対して, 既存の結果と同様の修正波動作用素の存在が示されることを紹介する。
特に, Strichartz 評価式を使わない証明法を用いることで, 既存の結果では扱えなかった, 負の固有値を許容するようなポテンシャルも扱うことができる事も紹介する。
本研究は水谷治哉 氏 (大阪大学)との共同研究に基づく。
令和7年6月13日(金) 15:30 -- 17:00
- 会場
- 九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 5階 C504小講義室
- 講演者
- 野ヶ山 徹 氏(東京理科大学)
- 題目
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Young's inequality for Banach function spaces and its application to maximal regularity estimates
- 要旨
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畳み込み型のYoungの不等式$\|f*g\|_{X} \le \|f\|_{X}\|g\|_{L^1}$は$X=L^p$としたときはよく知られており,Minkowskiの不等式と$L^p$ノルムの平行移動不変性を使うことで証明ができる.本講演では,一般の Banach function space $X$ に対し, Young の不等式が成り立つための$X$に対する必要十分条件を与える.
また,その応用としてBesov型の関数空間$\dot{B}^s_{X, r}$における熱方程式の最大正則性評価について考察する. 最大正則性評価についてはUMD (unconditional martingale differences)という性質を持つBanach空間に対して,その導出に一般論が存在する.しかし,例えばMorrey空間のような反射的でない関数空間はUMDという性質を持たず,一般論を適用することができない.そのためこれらの関数空間に対する評価の導出は個別に議論する必要がある.本講演で扱う関数空間はUMDという性質を持たないものも含んだ形になっている.
令和7年7月11日(金) 15:30 -- 17:00
- 会場
- 九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 5階 C504小講義室
- 講演者
- 中里 亮介 氏(信州大学)
- 題目
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半空間における圧縮性Navier-Stokes方程式の解の長時間漸近挙動について
- 要旨
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本講演では多次元半空間$\mathbb{R}^d_+$ $(d \ge 3)$における圧縮性Navier-Stokes方程式に対し, 粘着境界条件の下での解の長時間挙動について考察する. 全空間$\mathbb{R}^d$の場合は, 川島-松村-西田 (1979)とHoff-Zumbrun (1995)により, $L^2$の位相において, 解の非線形部分は$O(t^{-d/4-1/2})$の減衰レートを持つことが示された. 一方で半空間$\mathbb{R}^d_+$かつ粘着境界条件の場合は, 解の非線形部分の$L^2$ノルムの減衰評価について, 全空間の場合と異なる$O(t^{-d/4-1/4})$の減衰レートを持つことが隠居-小林 (2002, 2005)によって示されている. そこで本講演では, 時間大域解の長時間漸近挙動について考察し, 特に隠居-沖田 (2017)で導出された全空間の場合の漸近形や, 藤垣-宮川 (2001)で導出された半空間かつ粘着境界条件下での非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の漸近形とは本質的に異なる挙動が非線形部分より現れることについて報告する. 本講演の内容は沖田匡聡氏 (久留米高専), 隠居良行氏 (東京科学大学), 小林孝行氏 (大阪大学)との共同研究に基づく.