微分積分学講義(共立出版)のページ

最終更新日:2019年5月16日

● このページは,拙著「微分積分学講義」(2013年10月25日出版)に関するページです.
出版社のページ国会図書館のデータAmazonのページ

● 拙著に現れる2変数関数の動画・グラフのページを作成しました. (161128)

2019年1月25日で第6刷になりました.ご購入くださった方,教科書として採用してくださった方,ありがとうございました.
引き続き,本書をご支援くださいますよう,よろしくお願いいたします.

● 以下は,九大付属図書館のニュースレター「きゅうと」 vol.8, no. 4(2014年1月号)に掲載された自著紹介文です.

市場に微積本は数多くあるのに,比較的力量のある学生向けで, しかも分厚くない本は意外に見あたりません.
定評のある微積本はいずれも大部で,微積以外の科目も勉強しなければならない1年生にとって読破するのは
結構大変です.分厚くなく,でも本文の記述は丁寧に,例は興味深くて面白いものを,演習問題は単なる反復
練習ではなく,その解答・解説は詳しく,という方針で書き上げた本です.良く知られた定理でも,新たに
興味深い証明が発表されている場合は積極的に取り入れています.ぜひ手に取ってみてください.

● 誤植や補遺等を順次掲載して,購入してくださった方への便宜をはかり,
ご意見やご感想とともに,版を重ねるときに反映させていきたいと考えています.
野村隆昭宛ご連絡いただければ,大変ありがたいです.

● なお,本書の初版第1刷には残念ながら印刷事故本が存在します. 出版社のご尽力で現在はほとんど回収されていると思いますが,
もしお手元の本が事故本でしたら,大変お手数ですが,出版社のこのページの関連コンテンツのところをご覧くださって,
交換をしてくださいますよう,よろしくお願いいたします.
また,所属の大学の図書館等で事故本を発見されましたら,事情を係の人にお話くださって, 取り替えを申し出ていただければ,
著者として,何よりもうれしく存じます.

● 正しく印刷された第1刷本は,カバーを外したときの表紙の色が灰茶色です.一方で印刷事故本は緑色です.
図書館等ではカバーの上からビニール・コーティングをすることも多いようですので,事故本かどうかの確認は,
出版社のこのファイルにてお願いします.第1刷の事故本のみ交換可能ですので, よろしくお願いします.

なお,第2刷以降も本のカバーをはずしたときも緑色ですが,奥付で発行日を確認できます.


誤植のリスト:
● 第2刷までの修正箇所については,出版社のこのページにある正誤表をご覧下さい.
出版社のご厚意により,ページ送りを発生させないという条件のもと, 記述の改良という修正もさせていただきました.
修正箇所をご確認くださればと思います.

さらに誤植を発見されましたら,お手数ですが,ご連絡くだされば大変ありがたいです.


第6刷において修正した箇所については,このファイルを参照.
第4刷における下記の誤植は第5刷で対応済みです.

(1) 141ページ,1行目.3個の行列の内の中央のものの左下の要素の分母 (誤) ∂x1 → (正)∂y1 (170911)

(2) 216ページ,問題4.73 (1) の解答1行目.(誤)+ \frac{x2}{6} → (正) \frac{x2}{6} (170321)

このページ補遺にあった下記事項も第5刷で対応しました.

(3) 215ページ,問題4.57 (2) の解答.tan x log(sin x) = (cos x)^{-1} (sin x) log(sin x) と変形する方が速いです.

(4) 242ページ,問題7.44 (2) の解答.
複数の方から質問をいただいたので,もう少し丁寧に解答を書き換えた方がよいと思われる.
すなわち,√(x - 3)2 = |x - 3| であり, x のうごく範囲が -1 ≦ x ≦ 1 ゆえ, |x - 3| = 3 - x として絶対値が外れ,
それを引くので x - 3 が 現れていることを明示的に書く方が誤解が少ないと思われる.


第3刷における下記の誤植は第4刷において対応済です.

(1)* 30ページ,定理3.21の証明(2)の1行目:自然数を n0 を → 自然数 n0

(2)* 62ページ,問題 4.78 の問題文の2行目:tan x = x + a3x + a5x5 + o(x6) → tan x = x + a3x3 + a5x5 + o(x6)

(3)* 67ページ,7行目の o((xa)n+1) は o((xa)n) の誤りです.
それに伴い,式 (4.4) にある2カ所の o(xa) は o(1) の間違いです. (160914)

(4)* 152ページ,(い)の4行目.
(誤)Weierstarss → (正)Weierstrass (160921)

(5)* 171ページ下から7行目.(式(6.20)参照)となっている式において
(誤)(ac)2b2 → (正)(ac)24b2 (161112)

(6)* 181ページ,1行目.
(誤)nδ>1 →(正)nδ> ba (170115)

(7)* 182ページ,定理7.19の証明1行目. 定理6.118より,fD で有界であることに注意する.を付け加えます.(161221)

(8)* 198ページ,4行目右端の項. dx1\cdots dxnー1 と書いているので, 積分記号は ∫ \cdots ∫ と書く方が適切です. (170118)

(9)* 208ページ,2行目の積分の区域は R2 ではなくて, 第1象限 D:= {(x, y) ; x ≧ 0, y ≧ 0} です.(170112)


補遺

(1) 118ページ,例5.114.
π が無理数であることの証明で,Web page 等でよく引用されているのは,I. Niven の 1 ページの論文 Bull. Amer. Math. Soc, 53 (1947), 509 によるものです.
本書で引用した論文の証明は,Niven の証明を少し改良したもので, 部分積分を 2 回だけに押さえて,漸化式に持ち込むものです.
(1/n!)∫ 0π xn(π - x)n sin x dx を持ち出したのは Niven のアイデアです.
【追記】(170428) そのアイデアを解説するということで,以前ここに引用していた論文の記述は正鵠を射ていないようです.この論文参照.

πに関する古い論文を含めて様々な文献集めた本が↓です.(170223)
L. Berggren, J. Borwein and P. Borwein, Pi: a source book (3rd ed.), Springer, Berlin, 2004.

追加文献:(150717)
J. M. Borwein and S. T. Chapman, I prefer pi: A brief history and anthology of articles in the American Mathematical Monthly, Amer. Math. Monthly, 122 (2015), 195--216; addenda, 122 (2015), 800.
この文献はπに関してさまざまな話題が載っていて楽しいです. タイトルの I prefer pi が回文になっているのも洒落ています.
なお,Jonathan Borwein は昨年8月に亡くなったようです. → web page へ. (170223)

(2) 228ページ,問題6.41 (2)の解答.
例題6.40 (2) の解答を書き直したので,それにならって書き直す方がよいと思われるが,
時間の都合で見送っています.(150410)


ページ送り等が発生するので,改訂版が出せることになれば改めたいと思っている所.

(1) 62ページ,問題 4.78.tan x の Taylor 多項式近似は,この問題にあるようにtan x を設定してから,恒等式 (tan x)(cos x) = sin x に代入して係数比較する方が,
Arctan x の Taylor 多項式近似を使わないという点で直接的. このことを定理 4.63 の後の演習問題とし,問題 4.78 は少し書き直して,
逆関数の Taylor 多項式近似の例として,そのまま存続させる. (140701追加)

(2) 155ページ,問題 6.81 の1行下の( )内の挿入文は脚注に回す.

(4) 246ページ,文献[12]と文献[13]の順がアルファベット順だと逆.

その他,いろいろなご意見,より短い証明,改善点等を何人かの方々より伺っております.
より良い本に「育てて」いきたいと思いますので,どんなことでも, ご遠慮なく,著者までご連絡下されば,大変ありがたいです.


注意:注釈を入れるスペースが本にはないので,このページで書きます. 改訂版が出せるなら,反映させたい所です.

(1) 21ページ,問題2.33は命題に格上げし,十分性の方(証明が難しい方)を演習問題とする(140717追加).

(2) 21ページ,2個の連続関数の合成関数の連続性に関する定理2.36 の証明は間違いではないけれど,荒っぽいです.
一般に連続でない合成関数の極限はデリケートな所があります. このファイルを参考にしてください.

(3) 31ページ,中間値の定理の証明も,有界単調数列の収束を使う「2分探索」で書く方が,教科書としては使い易いかもしれない
(定理3.13を出発点とするということで).ただ,上限を使わないと,上に有界な単調数列はその上限に収束する,とは言えなく
なり,単に「収束する」で終わってしまいます.極限の正体に言及したいところです.

(4) 99ページ[1] でのパラメータ表示の幾何学的意味を付け加えた方がよいかもしれない.そのときには (5.9) と (5.10) を入れ替えた方がよいと思われる.(140710追加)


参考文献:(150414追加)
実は次の二つの文献も本書を書くときに参考にしましたが, 本書の中に納めるのを控えました.

● U. Dudley, Book review of "Calculus with Analytic Geometry" by George F. Simmons, Amer. Math. Monthly, 95 (1988), 888--892.
標題の本の書評ですが,ほとんどが評者の意見表明です. Conclusion と称するのがいくつかあります.

Conclusion #1. Calculus books should be written for students.
実際のところ,教師のために書かれているとしか思えない微積本も多いのでは?
演習問題をたくさん載せても,読者が解いてくれなかったら何にもならないですね.

Conclusion #2. Calculus books need more geometry.

Conclusion #3. Calculus is hard.
教えるのも難しいです.

Conclusion #4. Calculus books are too long.
確かに何でもかんでも書いてある微積本があります.
執筆中は, ***も載せないといけない,という強迫観念めいたものにさいなまれるのも事実です.

Conclusion #5. First-semester calculus has no application.
無理して現実とはかけ離れた「応用例」を書くのも….Authors know applications are phony. とまで書いてあります.

Conclusion #6. Not everyone needs to learn calculus.
確かに事実ではあります.

Conclusion #7 に That's enough about calculus books を含む6行だけが書評です.

● S. S. Epp, The role of logic in teaching proof, Amer. Math. Monthly, 110 (2003), 886--899.
1 ≦ x ≦ 3 の否定を 1 > x > 3 とする学生が多いとか,
All grass is green. の否定を書くのに,All grass is not green. は避けるべしとする文法学者がいるとか,
いずこも同じかな.確かに,grass のすべての葉が non-green であるとも読めるわけで….
New York Times にも,All juvenile offenders are not alike. という文章が載ったとか.