九大代数学セミナー:2018年度
トップページにもどる
最終更新: 2019年3月19日
2019年2月22日(金) 16:00-17:00 印刷用プログラム
- 横山 俊一 氏(九州大学) "Magma: for a decade"
- Magma とは, 豪シドニー大学を中心として開発・運営が進められている計算機代数システムであり, とくに整数論・多項式代数に特化した研究者向けのツールである. 九大数理には2008年に導入され, この10年でユーザが大きく拡大した. その間 Magma は最先端の数学的対象を取り込み続け, 講演者もその一端を contributor として開発している.
本講演ではまず Magma の導入を初心者向けに行い, この10年の進展(何が新しく計算可能になったか)を概観する. また他の数式処理システムと比較し, Magma のメリット・デメリットを率直に述べる. 時間が許せば, 現時点で世界最速のオープンシステムの紹介と, 今後の展望についても述べたい.
2019年2月14日(木) 16:00-17:00 ※ 通常と曜日が異なります 印刷用プログラム
- 阿部 紀行 氏(東京大学) "Mod p representations and pro-p-Iwahori Hecke algebra"
- We proved a classification theorem of admissible irreducible mod p representations in terms of supersingular representations. In the proof, a pro-p-Iwahori Hecke algebra has an important role. I will talk about some relations between mod p representations and modules of pro-p-Iwahori Hecke algebra. Some parts of the talk are based on joint works with F. Herzig, G. Henniart and M.-F. Vigneras.
2019年1月31日(木) 16:00-17:00 ※ 通常と曜日が異なります 印刷用プログラム
- 宮崎 隆史 氏(群馬大学) "特別な単数方程式と立方剰余理論の応用"
- 特別な単数方程式の一つは, a+b=c という等式が成立する様な, 素因子の候補が有限個に限定された自然数の三つ組 (a,b,c) を考えるものである. a,b,c が公約数を有さない場合には, この方程式の解の個数は有限であることがディオファントス近似論の一応用として示されている. 一方で, その解を全て決定することは, 非常に特別な場合にも容易ではない.
本講演では, 単数方程式の特別な場合である不定方程式 A^x+B^y=C^z を考える. ここで, A,B,C は与えられた自然数である. より詳しくは, 底数 A,B,C が120度三角形の三辺の長さを与える場合を考え, 底数が適当な合同条件を満たす場合に方程式の解を決定する. 証明の鍵の一つは, 立方剰余記号の計算である.
2019年1月15日(火) 16:00-17:00 ※ 通常と曜日が異なります 印刷用プログラム
- Ildar Gaisin 氏(東京大学) "Fargues' conjecture in the GL_2-case"
- Recently Fargues announced a conjecture which attempts to geometrize the (classical) local Langlands correspondence. Just as in the geometric Langlands story, there is a stack of G-bundles and a Hecke stack which one can define. The conjecture is based on some conjectural objects, however for a cuspidal Langlands parameter and a minuscule cocharacter, we can define every object in the conjecture, assuming only the local Langlands correspondence.
We study the geometry of the non-semi-stable locus in the Hecke stack and as an application we will show the Hecke eigensheaf property of Fargues conjecture holds in the GL_2-case and a cuspidal Langlands parameter. This is joint work with Naoki Imai.
2018年12月21日(金) 16:00-17:00 印刷用プログラム
- 大下 達也 氏(愛媛大学) "Galois 表現に沿った類数の漸近的下界について"
- p を素数, K を代数体とし, T をある適当な条件を満たすような K の絶対 Galois 群の有限次元 p 進表現の格子とする. 正の整数 n に対して, T/p^n T の固定化部分群で固定されるような K の代数閉包の最大の部分体を K_n と書く.
本講演では, T の Selmer 群を用いて, 拡大塔 { K_n }_n に沿ったイデアル類群の p-Sylow 部分群の位数の漸近的下界を与える. これを応用することで, 適当な条件を満たす K 上定義されたアーベル多様体 A が与えられたとき, Mordell-Weil 群 A(K) の情報を用いて, A の p 冪捻じれ点の座標を添加して得られる K の拡大体の塔に沿った, 類数の p 冪部分の明示的な下界を与えることが出来る.
尚, 本講演で紹介する結果は, A が CM アーベル多様体である場合に関する Greenberg 氏と福田-小松-山形3三氏による結果と, A が楕円曲線である場合に関する西来路-山内両氏と平之内氏による結果の統一的な一般化と見做せる.
2018年12月7日(金) 15:00-15:50 / 16:00-16:50 ※ 通常と時間が異なります 印刷用プログラム
- 15:00-15:50 小野 雅隆 氏(九州大学多重ゼータ研究センター) "Multiple zeta values/functions associated with 2-colored rooted trees"
- 多重ゼータ函数には Euler-Zagier 型や Mordell-Tornheim 型など, 函数を定義する級数の型によって様々なものが知られている. 講演者は二色根付き木と呼ばれる組合せ論的対象とそれに付随する多重ゼータ函数を導入し, いくつかの多重ゼータ函数に統一的な解釈を与えた. 本講演では二色根付き木とそれに付随する多重ゼータ函数やその正の整数点での値について, これまでに得られた結果を紹介する.
- 16:00-16:50 佐藤 信夫 氏(九州大学多重ゼータ研究センター) "多重ゼータ値の合流関係式"
- この講演では多重ゼータ値の「合流関係式」に関する広瀬稔氏との共同研究について紹介したい. 合流関係式とは, 変数付き反復積分の「標準関係式」の極限として得られるクラスの多重ゼータ値の関係式であり, また標準関係式とは変数付き反復積分の持つ変数での微分についての構造から, ある意味で最も簡単に得られるクラスの関係式である. アイディアとしてはシンプルではあるが, この合流関係式はとても強力な関係式族であり, 多重ゼータ値の全ての関係式を導くことが予想される. 正規化複シャッフル関係式は古くから多重ゼータ値の全ての関係式を導くと予想されているが, 正規化複シャッフル関係式と双対関係式がともに合流関係式に含まれることが証明できた. 最後に時間が許せば古庄氏によるアソシエーター関係式との関係に関する最近の結果についても述べたい.
2018年10月26日(金) 16:00-17:00 印刷用プログラム
- 並川 健一 氏(九州大学) "浅井L関数の特殊値の研究"
- 浅井L関数の特殊値に対し, その岩澤理論的な研究を紹介する. とくに保型表現の間の合同の構成を目的とした GSp(4) 上の Theta 関数の構成, およびp進浅井L関数の構成について概説する.
2018年7月20日(金) 16:00-17:00 印刷用プログラム
- 原 隆 氏(東京電機大学) "CM 体の非可換岩澤理論について"
- CM 体の非可換岩澤主予想を巡る講演者の近年の取り組みについて解説する. まず Jürgen Ritter と Alfred Weiss による(総実代数体の)同変岩澤理論の枠組みを CM 体に対して適用し, CM 体の多変数岩澤主予想を拡張する形で非可換岩澤主予想を提示する. その後, 主予想の証明に向けた代数サイドの議論(中間アーベル拡大に付随するp進ゼータ関数の《貼り合せ》条件の導出)の現状を, 総実代数体の場合と比較しつつ報告する. 時間が許せば, 解析サイドの議論(p進ゼータ関数の《貼り合せ》条件の正当化)に関連する Athanasios Bouganis, Dohyeong Kim 等の先行研究を紹介した上で, 今後の展望についても述べたい.
2018年6月15日(金) 16:00-17:00 印刷用プログラム
- Nils Matthes 氏(九州大学) "An algebraic characterization of the Kronecker function"
- In this work on elliptic functions, Kronecker introduced a meromorphic function $F_{\tau}(u,v)$ of two complex variables $u$ and $v$ (with $\tau$ in the upper half-plane) that can be expressed a quotient of Jacobi theta functions. About a century later, the function $F_{\tau}(u,v)$ was rediscovered by Zagier who demonstrated its central role in the context of periods of modular forms for $\Gamma:=PSL_2(\mathbb{Z})$.
The Kronecker function satisfies a three-term functional equation, the "Fay identity", which can be interpreted in terms of the cohomology of $\Gamma$. We show that, conversely, any solution to the Fay identity which is meromorphic in a small neighborhood of $(0,0) \in \mathbb{C}^2$ belongs to a five-parameter family of deformations of $F_{\tau}(u,v)$.
2018年5月17日(木) 16:00-17:00 ※ 通常と曜日が異なります 印刷用プログラム
- Ulf Kuehn 氏(University of Hamburg) "Lie Algebras related to multiple q-zeta values and period polynomials"
- The linearised double shuffle Lie algebra, whose elements are polynomials satisfying some functional equations, conjecturally describes the algebraic structure of multiple zeta values. The relations in depth two for this Lie algebra are given by period polynomials associated with modular forms for SL2(Z). We show that tensor products of period polynomials describe the relations in depth two in a Lie algebra related to multiple q-zeta values.
2018年4月20日(金) 16:00-17:00 印刷用プログラム
- 中村 健太郎 氏(佐賀大学) "階数2の普遍ガロア変形に対するオイラー系の構成"
- 保型形式に対する岩澤主予想(の半分)の証明において, 加藤和也氏は保型形式に付随する2次元p進ガロア表現に対してオイラー系を構成した. 加藤氏の一般化岩澤主予想によれば, このようなオイラー系はp進ガロア表現の族に対しても存在することが予想されている. 例えば, pで通常な保型形式の肥田族に付随するp進ガロア表現の族に対しては, 落合氏と深谷-加藤氏によってオイラー系が構成されている.
この講演では, 階数2の普遍ガロア変形に対するオイラー系の構成について説明したい. 構成では, 深谷-加藤氏による肥田族に対するオイラー系の構成のアイデアを基礎として, さらに, モジュラー曲線の完備コホモロジーと GL2(Qp) のp進局所ラングランズ対応との関係に関するエマートン(Emerton)らの理論を用いる.