令和4年度前期講演

日時 4月15日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 仙葉 隆 氏 (福岡大学)
題目 Behavior of solutions to some chemotaxis systems with local sensing
概要 本講演では、誘引物質の密度が拡散を含めた生物の移動に関係する規則をもつ走化性方程式系の解について考える。 走化性方程式系は生物の密度と生物を引き寄せる誘引物質の密度の時空間変化を表す2本の偏微分方程式で記述される拡散方程式系である。特に、前者の方程式は移流拡散方程式であり、生物の移動が拡散と走化性(生物が誘引物質に引き寄せられる性質)に依ることを表している。 Keller-Segel系と呼ばれる走化性方程式系において、走化性は誘引物質の密度や密度勾配を用いて表現されているが拡散は誘引物質の密度に依らない表現となっている。Keller-Segel系は解が時間大域的に存在するための十分条件や有限時刻爆発解の存在などに関して多くの研究がある。 本講演では、拡散も誘引物質の密度に依存する表現となっている走化性方程式系を考察したい。特に、Keller-Segel系の解の性質との共通点や相違点について考察したい。 本講演は、藤江健太郎氏(東北大学)との共同研究を基礎としている。



日時 4月22日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 橋詰 雅斗 氏 (広島大学)
題目 Trudinger-Moser型汎関数におけるH^1臨界点の漸近挙動について
概要 劣臨界及び臨界Trudinger-Moser型汎関数の正値臨界点について、領域のスケールに関するパラメータを導入し漸近挙動を考察する。今回扱う臨界点はNeumann境界条件を満たす非局所楕円型方程式の解となっており、関連する代表的な研究としてはLin-Ni-Takagi(1988)やNi-Takagi(1991)などがある。幾つか得られた結果の中で、特に、最大化関数においてパラメータを無限大にした場合の結果を中心に紹介する。最大化関数においては、Trudinger-Moser型汎関数の指数によって漸近挙動が異なるという結果が得られる。この挙動が分かれる境目は、全空間Trudinger-Moser不等式の最大化問題の達成可能性が分かれる劣臨界の指数となる。



日時 5月13日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 若狭 徹 氏(九州工業大学)
題目 ある空間1次元MEMSモデルの定常解とその安定性
概要 あるMEMSデバイスをモデル化したある放物型偏微分方程式について考える. そのクラスの方程式の時間発展解についてはQuenchingと呼ばれる現象が起こることが知られている. 本講演では空間1次元における, Dirichlet境界条件を持つ定常問題を考える. このとき定常解構造が極大解と極小解からなる, いわゆるサドルノード分岐タイプのものとなること, さらに極大解が比較定理の意味で安定であることを示す. 証明はSmoller-Wasserman(1981)などに見られる標準的なシューティング法および比較定理によるが, 複雑な計算を要するため, Matlabによる計算結果を一部利用する. 本講演の内容はJonq-Shenq Guo教授(淡江大学), Chi-Jen Wang教授(国立中正大学), Bo-Chih Huang氏 (国立中正大学), Cherng-Yih Yu氏(淡江大学)らとの共同研究に基づく.



日時 5月20日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 町原 秀二 氏(埼玉大学)
題目 等式から眺める Rellich の不等式
概要 2次の特異性をもつ積作用素をラプラシアンで抑える、所謂、Rellich の不等式を考えます。 我々の証明の方針はまず適切な等式を求め、そこから自明な項を落とすことにより不等式を得ます。 自乗可積分関数全体である Hilbert 空間で考えるため、直交性が表現を綺麗に見せてくれます。 球面調和関数分解を用いた等式も作成し利用します。 今回、関数の台に条件を付けて空間低次元でも不等式を考えます。 本研究は小澤徹氏、Bez Neal氏との共同研究に基づくものです。



日時 5月27日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 佐々木 多希子 氏(武蔵野大学)
題目 異なる伝播速度をもつ半線形波動方程式系の爆発曲線について
概要 本講演では,空間1次元のある半線形波動方程式系の爆発解について考える.波動方程式は解が有限伝播性を有するため,解が爆発する時刻が場所に依存することが知られている.解の爆発する時刻を記述する関数やその関数が描く曲線を爆発曲線とよぶ.爆発曲線付近での解の性質と爆発曲線の滑らかさには密接な関係があるため,爆発曲線はその微分可能性に焦点を当てた研究がなされてきた.2012年にMerle-Zaagにより,空間1次元のべき乗型非線形項を持つ波動方程式において符号変化する解を考えるとき,爆発曲線が微分不可能な点を含むことがあることが示された.また,このとき爆発曲線の傾きは波動方程式の伝播速度に依存することが示された.しかし,伝播速度が異なる波動方程式系の場合,爆発曲線の性質,特に微分不可能な点の有無や,微分不可能な点が存在する場合,その点付近での爆発曲線の性質はよく分かっていなかった.本講演では,伝播速度が異なる波動方程式系の爆発境界について得られた結果を報告する.



日時 6月3日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 吉澤 研介 氏(九州大学)
題目 A remark on elastic graphs with the symmetric cone obstacle
概要 平面曲線に対し、曲率の二乗積分で与えられる汎函数として曲げエネルギーと呼ばれる量がある。 本講演では、グラフ曲線に障害物を表す既知函数を下回らないという外的束縛が加えられた条件の下で、曲げエネルギーを最小化せよという問題を考察する。 特に障害物が対称錐型である場合に、障害物の高さに依存して最小元の存在・非存在が変わること、最小元が存在する場合その一意性、及び最小元の正則性に焦点を当てる。



日時 6月10日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 後藤 ゆきみ 氏(九州大学)
題目 Born-Oppenheimer Potential Energy Surfaces for Kohn-Sham Models in the Local Density Approximation
概要 二つの電気的に中性(陽子と電子がおなじ数)な原子がある系を考える。量子力学の教科書には、これらは van der Waals 力と呼ばれる長距離力で距離 R の -6 乗(遅延効果を入れると-7乗)で引き合うと書かれており、Lieb と Thirring によって非相対論的シュレディンガー理論においては厳密に証明もされている(Phys. Rev. A 1986)。しかし、安定な場所よりもっと原子同士を近づけると、反発力が強くなるはずである。本講演では、密度行列汎関数法による局所密度近似と呼ばれる非線形方程式による近似で、反発力が距離 R の -7 乗程度であることを説明する。これはもともとのシュレディンガー理論においても成り立つと Solovej によって予想されている(Molecular Physics 2016)。証明においては原子半径の評価が本質的であり、その物理的な意味と証明の手法について主に説明する。



日時 6月24日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 高瀬 裕志 氏(九州大学)
題目 Inverse source problems for symmetric hyperbolic systems of first-order
概要 一階対称双曲型連立方程式の波源項決定逆問題に対し,大域リプシッツ型安定性を証明する.証明には重み付きエネルギー評価であるカーレマン評価を用いる.低階項のみ連立する方程式系に対するカーレマン評価は,低階項を主要部の摂動項として扱うことで容易に得られる.しかし主要部が連立する方程式系に対するカーレマン評価を得るためには別の工夫が必要である.本発表では後者である対称双曲型方程式に対するカーレマン評価を紹介し,それを応用し主定理を証明する.



日時 7月1日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 菅 徹 氏(大阪公立大学)
題目 測度を初期値とする優線形熱方程式の解の存在について
概要 べき乗型の非線形項を持つ優線形熱方程式の初期値問題を考える。特に非線形項のべきが藤田指数より大きい場合のみを扱う。方程式を変えないスケール変換に関して不変な空間から初期値を選んだとき、方程式が可解であるのかどうかを議論する。例えば初期値の空間が Lebesgue空間の場合は可解であるが、測度を含む空間の場合には可解にならない例しか知られていないようである。本講演では、測度を含み、スケール不変で、方程式が可解となる空間を1つ提案したい。



日時 7月8日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 柏原 崇人 氏(東京大学)
題目 速度を含むSignorini型接触条件とTresca摩擦条件下での線形動弾性体方程式の一意可解性
概要 亀裂を含んだ弾性体の運動の解析は, 地震学をはじめとして多くの応用分野と関係しており重要な問題である.この問題に対しては,亀裂を領域内部の界面と考え,その上で非貫通接触条件(Signorini条件)と Coulomb摩擦条件を課して偏微分方程式の境界値問題としたものが基本的な数理モデルの一つとされている.しかし,このモデルの数学解析は非常に難しく,解の存在や一意性はともに未解決であるため, 弾性体に粘性を導入した上で,Signorini条件かCoulomb摩擦条件に何らかの修正を施すことが多い.本研究では,速度を含む形に修正したSignorini条件とTresca摩擦条件の組み合わせを提案し,非粘性の動弾性体方程式に対して解の存在と一意性を示す.本発表は伊藤弘道氏(東京理科大学)との共同研究にもとづく.



日時 7月15日(金) 15:30--17:00
会場 福岡大学 セミナーハウス 2階 セミナー室D 会場へのアクセス
講師 山崎 陽平 氏(九州大学)
題目 Center stable manifold for ground states of nonlinear Schrödinger equations with internal modes
概要 不安定な定在波を持つ空間3次元の非線形Schrödinger方程式について考える。 非線形項が集約的な3次のべき乗型の場合は、Schlagにより、不安定な定在波の軌道を含む中心安定多様体が存在して、中心安定多様体上の解は定在波に漸近することが示されている。Schlagによる証明で重要になるのは、対称性からくる0固有値と不安定固有値を除いて、定在波周りの線形化作用素に対するStrichartz評価が成立することである。しかし、一般の非線形項に対して、定在波周りの線形化作用素がinternal modeと呼ばれる固有値を持つ場合は、Schlagの議論が適用できない。 本研究では、internal modeを1組持つ場合に、Cuccagna--Maedaによるrefined profileを用いて、中心安定多様体上の解の漸近挙動について考察する。本研究は千葉大学の前田昌也氏のと共同研究にもとづく。



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