令和3年度前期講演

日時 4月16日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 佐藤 龍一 氏 (福岡大学)
題目 完全非線形放物型連立系の時間大域解の存在
概要 本講演ではある完全非線形放物型連立系の時間大域解の存在について考察する.主要部が通常のラプラシアンである場合は様々な先行研究が知られているが,主要部が非線形の場合,解析手法が制限されるため,めぼしい結果は見当たらない.本研究では有限時間で解が無限大に発散するような冪乗型の非線形項を持つ連立系を扱い,粘性解の理論を応用して解析を進めることを目標とする.本研究は公立鳥取環境大学の小杉卓裕氏との共同研究に基づく.



日時 4月23日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 高棹 圭介 氏 (京都大学)
題目 ある非局所項付きAllen-Cahn方程式を用いた体積保存平均曲率流の存在について
概要 体積保存平均曲率流を考える. この方程式の非局所項は,曲面積と平均曲率の積分で表されるが, Mugnai-Seis-Spadaro (2016), Kim-Kwon (2020)では,保存されるべき体積に関する量で非局所項を近似し,体積保存平均曲率流の弱解を構成した.本講演では, この手法をフェイズフィールド法に持ち込むことによって$L^2$-flowと呼ばれる弱解を構成する.



日時 5月14日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 久藤 衡介 氏 (早稲田大学)
題目 重定-川崎-寺本モデルの定常解に対する交差拡散極限
概要 重定-川崎-寺本(1979)によって提唱された交差拡散を伴うロトカ・ボルテラ競争系(SKTモデル)について考える.定常問題に関しては,Lou-Ni(1999)によって,片方の交差拡散係数を無限大にした際の極限系が2種類あることが示され,それらの極限系の解析が,SKTモデルに対する研究の一つの潮流となっている.本講演では,両方の交差拡散係数を無限大とした際の極限系を導出する.導出の鍵となる「交差拡散係数に無関係な定常解のアプリオリ評価」に対する証明のアイデア紹介に重きを置く.



日時 5月28日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 下條 昌彦 氏 (東京都立大学)
題目 単安定な反応項をもつ対数拡散方程式の解の挙動について
概要 対数拡散方程式は,未知関数の負ベキを拡散係数に持つ非線型拡散方程式である. 未知関数がゼロに近付くと拡散係数が発散し特異性が生じ,解は有限時間で消滅する. 薄膜運動や2次元リッチ流,ボルツマン方程式のカーレマンモデルの特異極限で得られる方程式として知られている. 我々は,単安定型の反応項をもつ対数拡散方程式の進行波解を書き下し, 任意の正値解の漸近挙動を解明する.まず,どのような初期値を与えれば,フロント型の進行波解に漸近するかを明らかにする.次に,遠方で指数減衰する解の挙動を,パルス型進行波の観点から,完全分類し,その漸近挙動を解析する. 本研究は東京工業大学の柳田英二氏,岡山大学の物部治徳氏,神奈川大学の松澤寛氏との共同研究である.



日時 6月4日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 北 直泰 氏 (熊本大学)
題目 非線形消散項を含むシュレディンガー方程式について
概要 空間1次元の非線形消散項を含むシュレディンガー方程式について、初期値問題の解がどのような減衰オーダーを示すのか考察する。解の減衰に着目するとき、時刻の増大に伴って非線形項の影響が小さくなることが期待される。これから解は漸近的に線形シュレディンガー方程式を満たすことが期待される。この予測は、非線形項のベキが 3 より大きい場合には正しいが、ベキが3以下になると消散効果がいつまでも解の減衰に影響を与え続けるという意味で間違いになる。データのサイズが小さい場合、L^2ノルムが保存するモデルに対して、20年ほど前に林先生, Naumukin氏, Kaikina氏によって解の漸近挙動を捉える方法論が構築されている。さらに、非線形消散モデルに対して、10数年前に下村氏によって解の減衰オーダーに非線形効果が陽的に現れることが証明された。 本講演では、大きな初期データに対して解の減衰オーダーを特定し、非線形項のベキをどこまで下げられるのか現状を報告したい。



日時 6月11日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 鶴見 裕之 氏 (京都大学)
題目 Well-posedness for the stationary Navier-Stokes equations on two-dimensional tori
概要 本講演では非圧縮性Navier-Stokes方程式の, 2次元トーラス空間上で与えられた外力に対する定常解の一意存在性および連続依存性(適切性)について論じる. はじめにトーラス上において斉次Besov空間を定義し, 本方程式の適切性を保証する外力の属する関数空間をその枠組みで与える. この中で, 例としてDiracのくし型関数などの超関数も外力として取り扱えることを確認する. 一方で位相が弱いトーラスBesov空間においては外力に対する定常解の連続依存性が破たんする(方程式が非適切となる)ことも併せて証明する.  



日時 6月18日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 柴田 将敬 氏(名城大学)
題目 メトリックグラフ上の半線形楕円型方程式の正値解について
概要 メトリックグラフとは、辺と頂点の集合であるグラフにおいて、各辺の長さを考え、各辺と区間と同一視したものである。その上の半線形楕円型方程式は、グラフの辺の数だけ未知関数を持つ常微分方程式系に帰着される。本講演では、特異極限問題を考え、最小エネルギー解に代表される正値解の漸近挙動や解構造について考察する。そして、解が集中する位置や解の個数とメトリックグラフの幾何的な情報との関係について、得られている結果を紹介する。本研究は、倉田和浩氏(東京都立大学)との共同研究に基づく。 



日時 7月2日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 前田 昌也 氏(千葉大学)
題目 Local Asymptotic stability of small solitons of the 1-D NLS with a trapping delta potential
概要 In this talk, we consider nonlinear Schrödinger equation with an attractive delta potential. We prove that the family of small standing waves, which bifurcates from the unique negative eigenvalue of the Schrödinger operator, is asymptotically stable. The proof is based on positive commutator argument. This talk is based on the joint work with Scipio Cuccagna (Trieste University). 



日時 7月16日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 林 雅行 氏(京都大学)
題目 Instability of standing waves for a double power nonlinear Schrödinger equation
概要 二重冪相互作用をもつ非線形シュレディンガー方程式(NLS)の定在波の不安定性について議論する.ここでは非線形項の相互作用に関して低い方の冪が斥力的,高い方の冪が集約的となる場合を考える.この方程式には空間遠方で指数減衰する定在波だけでなく多項式オーダーで減衰する定在波が存在し,純冪のNLSとは状況が大きく異なっている.本講演では,減衰が遅い定在波を含めた定在波の強不安定性および不安定性の結果を紹介する.高次元を含めた解析で証明の核となるのは減衰が遅い定在波の変分的特徴付けとViral等式である.一次元のときは定在波の具体計算をより詳細にすることができ,安定性/不安定性を決める二階微分に相当する量の零周波極限を考えることで,sharpな不安定性の条件が導出される.なお本講演の一部は深谷法良氏(東京理科大学)との共同研究に基づくものである.



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