令和3年度後期講演

日時 10月15日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 和久井 洋司 氏(東京理科大学)
題目 移流拡散方程式の定数定常解の安定性
概要 本講演では, n次元ユークリッド空間における移流拡散方程式の定数定常解の安定性について議論する. 移流拡散方程式の解は, 適切な設定のもとで初期値の総質量を時間発展に関して保存することが知られている. しかし, こうした空間全域での可積分性に着目した解の枠組みでは, 方程式から自然に導出される定数定常解を解として捉えることができない. 一方で, 初期値の局所的な特異性と解の時間局所存在の関係は藤田型の半線型熱方程式ではよく知られており, そこで用いられる局所一様Lebesgue空間は前述の定数関数を含むことができる. 本発表では, 局所一様Lebesgue空間における移流拡散方程式の解(軟解)の存在を述べ, 定数定常解の値の範囲に応じてその定数定常解の安定性が変化することを示す. 本研究は, ヴロツワフ大学(University of Wrocław)のSzymon Cygan氏, Grzegorz Karch氏およびKrzysztof Krawczyk氏との共同研究に基づく. 



日時 10月22日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 木下 真也 氏(埼玉大学)
題目 二次の非線形項をもつ非線形 Schrödinger 方程式の時間局所適切性
概要 本講演では, 空間を二次元とし, 初期値に角度正則性を仮定し, 二次の非線形項 |u|^2 をもつ非線形シュレディンガー方程式のソボレフ空間 H^s の枠組みでの初期値問題について考える. 一般の初期値に対しては, 正則性をあらわす s が -1/4 より小さい場合には Iwabuchi-Uriya (2015) により非適切 (norm inflation) であることが示されている. 角度正則性を仮定することで s >-1/2 での時間局所適切が成立し, この結果がある意味で最良のものであることを述べる. 本講演では特に、証明の鍵となる合成積評価について詳しく紹介したい. なお, 本講演の内容は大阪大学の岡本 葵氏と宮崎大学の平山 浩之氏との共同研究に基づく.



日時 10月29日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 辻川 亨 氏(宮崎大学/明治大学)
題目 Fix-Caginalp方程式の定常解に関する大域的分岐構造について
概要 本講演では、Fix(1983)とCaginalp(1986)により提唱された非等温固相ー液相相転移モデルの定常解の大域的な解構造について、最近えられた結果をお話しします。 これまで、定常問題に関してElliott, Zheng(1990)、およびSuzuki, Tasaki(2009)などの先行研究がありますが、 定常解の存在および非存在に関して特別な場合の結果にのみで、大域的構造の解明には至っていない状況です。 そこで、1次元の場合に分岐理論、等高線法及び楕円積分などを用いて、定常解の集合がパラメーター空間内の曲線と同一視できること、およびその曲線の形状などを系統的に分類することができました。 特に方程式が非局所項を含むAllen-Cahn型であることから、ヤコビの楕円関数や完全楕円積分等を用いて,すべての定常解を明示的に求めたことが重要な点です。 本講演の内容は田崎創平氏(北海道大学)、森竜樹氏(武蔵野大学)、四ツ谷晶二氏(龍谷大学)との共同研究に基づいています。



日時 11月5日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 古川 賢 氏(理化学研究所)
題目 プリミティブ方程式とNavier-Stokes方程式に関連する特異極限問題について
概要 薄い3次元領域内で成り立つプリミティブ方程式は,静水圧近似でNavie-Stokes方程式の鉛直方向の方程式を置き換えたものである,一方,この方程式は,異方粘性Navier-Stokes方程式に対してスケーリングを施すことで特異極限として形式的に導出することが可能である.本講演では,この特異極限問題をDirichlet境界条件の下で\(L_p\)-\(L_q\)最大正則性理論を用いて考察する.なお,本講演の講演内容は東京大学の儀我美一教授,柏原崇人准教授らとの共同研究に基づく.



日時 11月12日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 牧野 哲 氏(山口大学)
題目 球対称気体星の断熱的非動径振動におけるg-モードについて
概要 Euler-Poisson方程式に従って運動する気体星を考える。球対称な平衡解で有限半径をもつものを固定し、そこからの微小摂動を支配する線型化近似した波動方程式の生成作用素のスペクトルを調べる。適当なHilbert空間で考えると、等エントロピー振動の場合は、重複度無限の0固有値以外のスペクトルは、無限遠に集積する重複度有限の固有値列のみであるが、等エントロピーでなく固定した平衡解のBrunt-Vaisala振動数N^2が inf N^2/r^2>0をみたすとき、断熱的振動に0に集積する固有値列が出現する。これをgモードと呼ぶ。詳しくはarXiv:1902.03675_v21, June 21, 2021。



日時 11月19日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 滝本 和広 氏(広島大学)
題目 Bernstein type theorem for the generalized parabolic 2-Hessian equation under weaker assumptions
概要 20 世紀初頭,Bernstein は \(\mathbb{R}^2\) 全体で定義された 関数のグラフで表される極小曲面は平面に限ることを示した.また, Monge-Ampère 方程式に対しては,\(\mathbb{R}^n\) 全体で \(\det D^2 u=1\) を 満たす凸な解 u は 2 次多項式に限ることが示されている.このような,方程 式の全域解の特徴付け(本講演では Bernstein 型定理と呼ぶ)については多 くの方程式に対して研究されている.放物型 k-Hessian 方程式に対しては Nakamori-Takimoto (2015, 2016) により,解の凸性と増大度条件の仮定の下 で Bernstein 型定理が証明された.本講演では,放物型 2-Hessian 方程式に 対して,凸性よりも緩い条件と増大度条件の仮定の下でも Bernstein 型定理 が成立することについて報告する.



日時 11月26日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 深谷 法良 氏(東京理科大学)
題目 点相互作用を持つ2次元非線形シュレディンガー方程式の定在波解の安定性と不安定性
概要 原点において点相互作用を持つシュレディンガー作用素は,\(C_c^\infty(\mathbb{R}^d\setminus\{0\})\)を定義域とする\(L^2(\mathbb{R}^d)\)上のラプラシアンの自己共役拡張として実現される. 1次元においてはデルタ関数をポテンシャルとして持つシュレディンガー作用素に対応する. 本講演では,2次元において点相互作用を持つ非線形シュレディンガー方程式の基底状態の存在・球対称性および定在波解の安定性・不安定性について得られた結果を紹介する. 本講演はVladimir Georgiev氏(ピサ大学/早稲田大学)と池田正弘氏(理化学研究所/慶応大学)との共同研究に基づく.



日時 12月3日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 兼子 裕大 氏(日本女子大学)
題目 正値双安定項を伴う拡散方程式の自由境界問題に現れる伝播現象
概要 本講演では,反応拡散方程式の自由境界問題に対して,球対称解の漸近挙動と解の形状について報告する。この問題は外来種等の侵入現象を表す数理モデルであり,単安定・双安定・燃焼型の反応項についてはDu-Lou(2015)等によりspreading(侵入拡大)とvanishing(個体絶滅)という特徴的な挙動が調べられている。この研究の目的の1つは,反応項が複数の零点を持つときそれぞれの安定平衡点に対応するspreading挙動が現れるか,という疑問に答えることである。講演の前半では,0以外に2つの安定平衡点と1つの不安定平衡点を持つ反応項(正値双安定項)について,大小2つのspreading挙動が現れることを示す。後半では,領域全体で大きなspreading挙動を見れば,進行波とsemi-waveから構成されるテラス関数であることを説明する。本講演の内容は,松澤寛氏(神奈川大学)と山田義雄氏(早稲田大学)との共同研究に基づく。



日時 12月10日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 池田 正弘 氏(理化学研究所/慶応大学)
題目 Well-posedness for the fourth order Schrödinger equation with third order derivative nonlinearities
概要 非線形項に微分を含む4階シュレディンガー方程式の初期値問題を考える. この方程式は, 非線形項に3階の微分を含む完全可積分系の方程式(DNLS階層の1つ)を含んでいる. 本講演の目的は, 先行研究より広いソボレフ空間, あるいは, 一般の非線形項に対して, 適切性及び散乱を示すことである. 主結果の証明はPornnonpparath(JDE2018)が用いたような関数空間の上で縮小写像の原理を用いる. その鍵になる線形評価と双線形評価を得るために, Bejenaruら(Ann. Math2011)が用いたようなデュアメル項の分解と剰余項の評価を行う. また, 適切性の結果の最適性についても議論する. 本講演は, 平山 浩之氏と田中 智之氏との共同研究に基づくものである.



日時 12月17日(金) 15:30--16:30
会場 オンラインでの開催 (Zoom)
講師 小池 開 氏(東京工業大学)
題目 Long-time behavior of several point particles in a 1D viscous compressible fluid
概要 1次元圧縮性粘性流体と,その中を運動する質点からなる系を考える(質点の運動自体も未知で,Newtonの運動方程式を解くことで決まる).十分に時間が経つと,質点の運動エネルギーは流体に散逸し,その速度 \(V(t)\) は減衰することが予想される.では実際,質点の速度 \(V(t)\) はどのような法則に従って減衰するだろうか?本講演では,ほとんどの場合に,べき乗則 \(V(t)\sim t^{-3/2}\) が成立することを述べる(すなわち,十分大きな時刻 \(t\) に対して \(C^{-1}t^{-3/2}\leq |V(t)|\leq Ct^{-3/2}\) の形の不等式が成り立つ).また,講演者のこれまでの研究では単一の質点の運動を対象としてきたが,質点が複数あっても同様のべき乗則が成立することが最近分かったので,この拡張についても報告する(https://arxiv.org/abs/2111.07660).証明においてはGreen関数の各点評価が重要な役割を果たすが,質点が複数あることによってGreen関数がどのように変化するか,またその各点評価はどのようにして得られるか,ということを説明したい.



日時 1月28日(金) 15:30--16:30
会場 九州大学 伊都キャンパス IMIオーディトリアム (ウエスト1号館 D棟 4階 413号室)

講師 江頭 貴成 氏(九州大学)15:30--16:00
題目 Asymptotic profiles of solutions to the Navier-Stokes-Coriolis equation
概要 本講演では3次元全空間における Coriolis 力付き Navier-Stokes 方程式の初期値問題について考察する. Koh-Lee-Takada (2014) によって構成された時間大域解に関して,初期速度場が可積分な場合に, 回転による分散性の効果を反映した時間減衰評価と,時間無限大での線形解への漸近を証明する. 更に,初期速度場に1次の重み付き可積分性を課した際に,解のより速い時間減衰評価と 時間無限大における解の漸近形を導出する.証明における困難な点として, 回転による不連続な振動項のため,線形解の積分核が可積分性を有さないことが挙げられる. 本講演では Fujigaki-Miyakawa (2001)の解析手法を参考に,解の時空間可積分性を用いた証明を与える.

講師 日高 翔 氏(九州大学)16:00--16:30
題目 An Lq-analysis of compressible viscous flows past a rotating obstacle in R3
概要 本講演内容は、Farwig-Pokorny(2015)による論文の総合報告である。 3次元全空間内において、回転する障害物の周りを流れる圧縮性流体の運動を記述する Navier-Stokes 方程式について考察する。 回転行列を作用させることにより、問題を時間依存しない領域内で考え、その変換によって得られた未知の速度場 v に対して、g = div(v) の形の解公式を構成し、その L^q 評価を導出する。 L^q 評価においては、 Hormander-Mikhlin 型の Fourier multiplier 定理を適用できない特異性を有する multiplier 関数が現れる。 その特異性を扱うために、修正化 Bochner-Riesz multiplier を導入し、 球面上における Fourier 制限定理を用いることで、L^q 評価を導出する。



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