微分積分A期末試験解答

今野拓也 ¹

[1] つぎの主張が正しければ○、誤りであれば × を記入せよ。

(1)

$f : (a,b)\to \mathbb{R}$ が微分可能ならば$f$ は$(a,b)$ 上で連続である。○

(2)

$f(x)=x^{107/3}$ は無限回微分可能である。×
( $f^{(35)}(x)$ は$x^{2/3}$ の定数倍だが、これは$x=0$ で微分不可能。)

(3)

$f$ , $g : (a,b)\to \mathbb{R}$ が$C^{1}$ 級で、ある $c\in (a,b)$ で $g'(c)\not=0$ ならば、
$${\lim_{x\to c}} \dfrac{f(x)}{g(x)}= \displaystyle{\lim_{x\to c}} \dfrac{f'(x)}{g'(x)}$$ . ×
(例えば$f(x)=1$ , $g(x)=e^{x}$ のとき、$x=0$ での極限は左辺が$1$ , 右辺が0 となって一致しない。)

(4)

$f : (a,b)\to \mathbb{R}$ が$C^{24}$ 級、 $g : (a,b)\to \mathbb{R}$ が$C^{36}$ 級のとき、$fg$ は$C^{36}$ 級である。×

(5)

$f : (a,b)\to \mathbb{R}$ が$x=c$ で微分可能でなければ、$f(x)$ は$c$ で極値を取ることはない。×
($f(x)= \vert x\vert$ のように微分可能でなくても極値を持つ関数はある。)

(6)

$f : (a,b)\to (f(a),f(b))$ が狭義単調増加で微分可能でも、逆関数 $f^{-1} : (f(a),f(b))\to (a,b)$ が微分可能とは限らない。○
(例えば $f(x)= x^{3}$ の逆関数は$x=0$ で微分不可能である。)

(7)

2回微分可能な関数 $f : (a,b)\to \mathbb{R}$ が凸であるためには、すべての$x\in(a,b)$ で$f''(x)>0$ であることが必要十分。○

(8)

$f : (a,b)\to \mathbb{R}$ が$71$ 回微分可能で $f'(c)= f''(c)=\dots= f^{(70)}(c)=0$ , $f^{(71)}(c)\not=0$ のとき、$c$ で$f(x)$ が極値を取ることは絶対にない。○

(9)

凸関数 $f : (a,b)\to \mathbb{R}$ が逆関数$f^{-1}$ を持てば、$f^{-1}$ は凹関数である。○

(10)

2回微分可能な凸関数の導関数は単調減少である。×
(単調増加になる。)

[2] 次の関数の導関数を求めよ。
(1) $y= \log \dfrac{e^{x}+e^{-x}}{2}$ (2) $y= \sin^{3}x\cos x$ (3) $y= \tan^{-1}\dfrac{2x}{x^{2}+1}$ (4) $y= x^{x}$

[解答]最後のみ対数微分が必要。(1) $\tanh x$ , (2) $3\sin^{2}x-4\sin^{4}x$ , (3) $\dfrac{2(1-x^{2})}{x^{4}+6x^{2}+1}$ , (4) $x^{x}(1+\log x)$ .

[3] (i)不等式 $\cos x+\sin x>1+x-x^{2}$ , ($x>0$ )を示せ。
(ii) $f : \Bigl[\dfrac{1}{2},\dfrac{3}{2}\Bigr] \ni x\longmapsto \sqrt{x}+\dfrac{1}{\sqrt{x}}\in \mathbb{R}$ の最大値と最小値を求めよ。

[解答](i) $f(x):= \cos x+\sin x+x^{2}-x-1$ が$x>0$ で常に正であることを見ればよい。

$$f'(x)= \cos x-\sin x+2x-1, \quad f''(x)= 2-\sin x-\cos x$$

である。まず$f''(x)>0$ , ($x>0$ )に注意する。平均値の定理と合わせて

$$\dfrac{f'(x)}{x}= \dfrac{f'(x)-f'(0)}{x-0}= f''(\theta(x)) >0, \quad 0<\exists \theta(x)<x$$

であるから、$f'(x)>0$ , ($x>0$ )がわかる。もう一度平均値の定理を使って

$$\dfrac{f(x)}{x}= \dfrac{f(x)-f(0)}{x-0}= f'(\varphi(x))>0, \quad 0<\exists \varphi(x)<x$$

となるから、$f(x)>0$ , ($x>0$ )である。

(ii) $f'(x)= \dfrac{x-1}{2x^{3/2}}$ であるから$f(x)$ の増減表は以下のようになる。

$x$	$1/2$		$1$		$3/2$
$f'(x)$		負	0	正
$f(x)$	$3/\sqrt{2}$	$\searrow$	$2$	$\nearrow$	$5/\sqrt{6}$

よって最小値は$2$ , 最大値は $3/\sqrt{2}$ である。( $\sqrt{3}=1.7320508 > 5/3$ に注意。)

[4] 次の極限値を求めよ。ただし$a, b, c>0$ である。
(i) $${\lim_{x\to 0}} \dfrac{\cosh x-1}{x^{2}}$$ (ii) $${\lim_{x\to 0}} \dfrac{\log(1+x)-x+\dfrac{x^{2}}{2}}{x^{3}}$$ (iii) $${\lim_{x\to 0}} (\cos x)^{1/x^{2}}$$
(iv) $${\lim_{x\to 0}} \left(\dfrac{a^{x}+b^{x}+c^{x}}{3}\right)^{1/x}$$

[解答](i) $${\lim_{x\to 0}} \dfrac{\cosh x-1}{x^{2}} = \displaystyle{\lim_{... ...c{\sinh x}{2x} = \displaystyle{\lim_{x\to 0}} \dfrac{\cosh x}{2}=\dfrac{1}{2}$$ .
(ii) $\log (1+x)$ にTaylorの定理を適用すると、ある $\theta\in (0,1)$ に対して

$$\log(1+x)= x-\dfrac{x^{2}}{2}+ \dfrac{x^{3}}{3(1+\theta x)^{3}}$$

である。よって

$$\lim_{x\to 0} \dfrac{\log(1+x)-x+\dfrac{x^{2}}{2}}{x^{3}}= \lim_{x\to 0} \dfrac{1}{3(1+\theta x)^{3}} =\dfrac{1}{3}.$$

(iii)まず対数を取って

$$\lim_{x\to 0} \log (\cos x)^{1/x^{2}}= \lim_{x\to 0} \dfrac{\log (\cos x)}{x^{2}} = \lim_{x\to 0} \dfrac{-\sin x}{2x\cos x}= -\dfrac{1}{2}.$$

よって $${\lim_{x\to 0}} (\cos x)^{1/x^{2}}= e^{-1/2}$$ .
(iv)これも対数を取ると、

$$\lim_{x\to 0} \log\left(\dfrac{a^{x}+b^{x}+c^{x}}{3}\right)^{1/x} = \lim_{x\to 0} \dfrac{\log\left(\dfrac{a^{x}+b^{x}+c^{x}}{3}\right)}{x}$$

$$= \lim_{x\to 0} \dfrac{a^{x}\log a+ b^{x}\log b+ c^{x}\log c}{a^{x}+b^{x}+c^{x}}$$

$$= \dfrac{\log(abc)}{3}.$$

よって $${\lim_{x\to 0}} \left(\dfrac{a^{x}+b^{x}+c^{x}}{3}\right)^{1/x}= \sqrt[3]{abc}$$ .

[5] $f(x):=\sqrt{1-x^{2}}$ , ( $x\in (-1,1)$ )とおく。
(i) $(1-x^{2})f''(x)-xf'(x)+f(x)=0$ を示せ。
(ii)数列 $\{ f^{(n)}(0)\}_{n\in \mathbb{N}}$ を求めよ。

[解答](i) $f'(x)=-x/\sqrt{1-x^{2}}$ , $f''(x)= -1/(1-x^{2})^{3/2}$ であるから

$$(1-x^{2})f''(x)-xf'(x)+f(x) = \frac{-1}{\sqrt{1-x^{2}}}+ \frac{x^{2}}{\sqrt{1-x^{2}}} +\sqrt{1-x^{2}}=0.$$

(ii) (i)の式の両辺を$n$ 回微分するとLeibnizの公式から

$$0 = (1-x^{2})f^{n+2}(x)-2nxf^{(n+1)}-n(n-1)f^{(n)}(x)$$

$$\phantom{(1-x^{2})f^{n+2}(x)-2nx} -xf^{(n+1)}(x) -nf^{(n)}(x) +f^{(n)}(x)$$

$$= (1-x^{2})f^{n+2}(x) -(2n+1)xf^{(n+1)}(x)- (n^{2}-1)f^{(n)}(x)$$

である。これに$x=0$ を代入すれば漸化式

$$f^{(n+2)}(0)= (n^{2}-1)f^{(n)}(0), \quad f^{(n)}(0)= (n-1)(n-3)f^{(n-2)}(0)$$

を得る。これと$f'(0)=0$ , $f''(0)=-1$ から、$n$ が奇数なら $f^{(n)}(0)=0$ , 偶数ならば $f^{(n)}(0)= -\dfrac{n!(n-2)!}{2^{n-1}(n/2)!(n/2-1)!}$ であることがわかる。