Kyushu University Leading PhD Program in Mathematic for Key Technology 九州大学リーディングプログラム『キーテクノロジーを牽引する数学博士養成プログラム』

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▶海外長期インターンシップ報告(軸丸芳揮)

●報告者:
九州大学大学院数理学府博士後期課程2年 リーディングプログラム生 軸丸芳揮

●出張期間:
平成30年4月15日~平成30年7月13日

●渡航国(都市名)・用務先:
ドイツ(ベルリン)・ベルリン自由大学

●報告:
本インターンシップでは微分幾何学・位相幾何学の一般論に関する講義に出席し,離散微分幾何学の基礎と離散版のHodge 分解定理について,及び曲面が境界をもつ場合ともたない場合について詳しく学んだ.
またベルリン自由大学Konrad Polthier教授らのグループが作成されたソフトウェアJavaView について,その扱いと内部アルゴリズムについて学んだ.

リーディングプログラムにおいて培うことが問われる重要なスキルである,現代数学の専門知識と活用能力,および計算機運用能力の向上が今回得られた主な成果である.
例えば,ベルリン・シャリテ大学病院における「心臓の血液を送り出す力が弱い患者に取り付けるポンプ」の研究には,次のような動機や課題がある:

(a) 患者への負担を減らすように,小さく,かつ効率的な形を考えること.
(b) また血液には様々な物質が含まれているため,ポンプの中に「汚れ」が溜まる問題.

このような産業界の問題に対する幾何学のアプローチとして離散微分幾何学があり,理論・応用面共に現在活発に研究されている.そのため,離散曲面やその上のベクトル場を含む基礎的内容,またベクトル場に対するHodge 型の分解定理について,曲面が境界をもつ場合ともたない場合について学んだ.これは,与えられたベクトル場を「きれいな」性質をもつベクトル場へ分解することを意味し,例えば血流をベクトル場とみなす場合に適用される.
さらに,離散幾何を可視化するソフトウェアJavaView について,その内部アルゴリズムについて学び,上記で述べたHodge 分解の単純な場合の可視化が実装できるようになった.
また英語の運用能力について,数学的な感覚を共有し真摯に向き合えば,言葉に窮しても困難は乗り越えられるように感じられた.
今回は理論的な側面に重点を置いたため,実際に応用に関わる部分の研究に深く携わることができなかった(理論的内容の理解が十分でなければ,コードの内容が理解できないことは注意しておきたい).しかしながら,Konrad Polthier教授率いる研究チームのメンバーと親しくなることができ,今後,より応用面に深く関わる予定である.その実施までに,自分の研究分野との関連を求める理論的側面の発展,さらにその実装の練習によるプログラミングに時間を割き,実践に適応する能力を高める予定である.


   
連絡先:九州大学数理学研究院/マス・フォア・インダストリ研究所 事務室
(数理・MI研究所事務室)
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