概要 |
微分方程式の初期値問題の適切性を崩す「有限時間特異性」は様々な形で顔を出し、
微分方程式の解の解析・数値計算を困難にする厄介な対象です。
具体的な系において特異的な解が存在するか、「いつ、どこで、どのように」
特異性が発現するか、その具体的プロファイルはどのようになっているかは
非常に基本的かつ非自明な問題として具体的な系に対して問われます。
本講演では力学系の観点から常微分方程式系の有限時間特異性、特に爆発解を取り扱います。
相空間の「コンパクト化」と「時間スケールの変換」を用いて、発散解を
無限遠に対応する「地平線」上の不変集合の安定多様体に対応させます。
さらに地平線上の不変集合の構造を解析することで、爆発解の特徴づけを行います。
これにより爆発解を有する初期データ(いつ爆発するか)、どのような爆発解が
存在しうるか(どこで爆発するか)の幾何学的特徴づけ、さらに爆発レート(
どのように爆発するか)の導出も可能になります。
特に単調増大しながら爆発する「定常爆発」、周期振動しながら爆発する
「周期爆発」について、タイプ-I 爆発解の特徴づけとそれ以外の爆発レートを持つ
様々な例を紹介します。
時間が許せば、爆発解の精度保証付き数値計算との関連性にも触れます。
|