概要 |
時間変数を係数に持つ消散項がある波動方程式は、線形自由な場合に、
その減衰オーダーによって本質的に消散項が効いている場合とそうで無い場合に分かれる。
時間変数に関して1次のオーダーで減衰するスケール不変な場合はその境目になっており、
時間変数を除いた正定数の大きさが効いてきて1との大小によって状況が分かれる。
これは半線形項が付いていてもその分類が変わらないと思われていた。
つまり、定数が1より大きいときは消散項の影響が効いて半線形熱方程式と同様に藤田指数が臨界になり、
逆に1より小さいと藤田指数より大きくても解の爆発が起こるという予想である。
この予想は若杉勇太氏('14)とM.D'Abbico氏('15)の仕事から得られる。
解析対象の方程式は、Liouville変換によって質量項に2次の時間減衰を持つKlein-Gordon型方程式になるが、
上述の定数が2の場合にのみ質量項が消えるという特徴がある。
その特殊な場合に、半線形波動方程式に現れる臨界指数であるStrauss指数に深く関連した指数が臨界になることを、
M.D'Abbico氏&S.Lucente氏&M.Reissig氏('15)が波動方程式を解析するテクニックをそのまま適用して証明した。
本講演では、未知関数の導関数に対してある変換を施すことによって
質量項が消えていない場合でも解析可能になり、
藤田指数を超えてStrauss指数に深く関連した指数まで解の爆発が起きる定数の境目が1でも2でもなく、
空間次元nに関して1次の増大度を持つことを紹介したい。
本講演の内容はLai Ning-An氏(中国麗水大学)と若狭恭平氏(室蘭工業大学)との共同研究による。
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