九州関数方程式セミナー 平成28年度前期講演

日時 4月22日(金) 15:30--17:00
会場 福岡大学 セミナーハウス 2階 セミナー室
講師 桑江 一洋 氏 (福岡大学)
題目 Stability of the heat kernel estimates under Feynman-Kac perturbations for symmetric Markov processes
概要 この講演は熊本大学自然科学研究科金大弘氏との共同研究に基づく。 熱核の(大域的な)上下評価は1967年のAronson の結果である 楕円型微分作用素の熱核のガウス型上下評価に始まる 長い歴史がある。完備リーマン多様体上の熱核についてはリッチ曲率が非負の条件のもとでの Li-Yau 型の大域的なガウス型評価が知られている。 Li-Yau 型のガウス型評価は大域的な体積倍条件+大域的な局所ポアンカレ不等式と 同値で、さらに大域的な放物型ハルナーク不等式とも同値あることが Saloff-Coste(1992), Grigoryan (1991) 等によって完備リーマン多様体多様体の枠組みで示されており、それは アレキサンドロフ空間やグロモフハウスドルフ極限空間などを含む測度距離空間の枠組みでも 成立することが Sturm (1994)によって示されている。 またフラクタル集合上での ブラウン運動の熱核の上下評価については劣ガウス型評価がBarlow-Perkins (1985), Barlow-Bass (1999), Kumagai (1993) 等によって確立されている。 一方で分数冪ラプラシアンに対応する 飛躍型マルコフ過程である対称安定過程の熱核はガウス型でない多項式位数の上下評価をもつことが 古くから知られており、その一般化である対称安定型過程と呼ばれるものの熱核も同様の評価を もつことがChen-Kumagai(2003) によって示されている。

これら大域的な熱核評価が摂動で安定かどうかというのが講演主題である。

摂動を特徴付ける測度のクラスが加藤クラスの場合には、もとの熱核の大域的な上下評価に比べて 時間に関する指数オーダーの増大と減衰項が出現する大域的な上下評価しか成立しないことが今まで認識されている。

Takeda(2007)は多様体上のLi-Yau 型評価が安定になるための必要十分条件が 摂動を特徴付ける測度のクラスがPinchover や Murata によって導入されたsmall perturbation のクラス(条件付きグリーン緊密な加藤クラス測度)の場合に ファインマンカッツ汎関数の計測性(gaugeablity)で与えられることを 示した。またTakeda (2006)では同様な主張がユークリッド空間上の対称安定過程の場合でも成立することを エネルギー有限な測度の条件下で示している。

本講演ではTakeda (2006),(2007)の結果が 対称に限定するも一般的な摂動で拡張できることのみならず その主張が(Takeda (2007)の設定でも) Green緊密な加藤クラスの場合まで改善できることを報告する。

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