九州関数方程式セミナー 平成23年度前期講演

日時 4月22日(金) 15:30--17:00
会場 福岡大学 セミナーハウス 2階 セミナー室
講師 村川 秀樹 氏 (九州大学・数理)
題目 反応拡散系近似, 急速反応極限
概要 氷の融解・水の凝固の過程を記述するステファン問題, 地下水の流れを表す多孔質媒体流方程式, 2種生物種の競合問題における互いの動的な干渉作用を記述する重定-川崎-寺本交差拡散系など, 様々な問題を含む非線形拡散問題を取り扱う. 本講演では, 非線形拡散問題の解が, 拡散が線形である半線形反応拡散系の解により近似されることを示す. この結果は, 非線形拡散問題の解構造が, ある種の半線形反応拡散系の中に再現されることを示唆するものである. 一般に, 非線形問題を扱うよりも半線形問題を取り扱う方が容易であるため, 本研究は非線形問題の解析や数値解析に応用できることが期待される.
このような研究は反応拡散系近似と称される. 非線形問題の解を線形拡散項と非線形反応項から成る反応拡散系の解により近似する研究である.これに対して, 急速反応極限の問題は反応項を含む方程式系について,その反応率が大きくなったときの極限における解の振る舞いを調べる問題である.研究の動機は異なるが,どちらも非線形問題と半線形反応拡散系との関係についての研究である.時間が許せば急速反応極限の最近の話題についても触れたい.